「この対象者は特殊な使い方をしている人だから、この意見は置いておこう」
「この対象者は極端に多い頻度で使っている人だから対象者から外そう」
ユーザーリサーチを行うプロジェクトに入っていると、こういった声をよく耳にします。(本当によく聞きます!)
ですが、DXや業務変革、新規事業開発などにおいて、このような声、考え方は大きな機会損失を生みます。
今回はユーザーインタビューの対象者の選び方という、ユーザーインサイトをプロダクトへ活かそうとする方であれば一度は悩んだことがあるテーマを扱います。
標準的なユーザーへインタビューするということ
研修や実際のプロジェクトにおいて、「既存業務のDXや新たなプロダクト・サービスの開発において、ユーザーインタビューの対象者はどういう人たちを選定すればよいのか」をクライアント企業メンバーへ問いかけると、多くの方は「標準的なユーザー」を選ぶと答えます。
例えば、新たなスマートフォンを開発するのであれば、
20〜30代の会社員
1日2,3時間スマホを使用
人気のアプリを使っている
といった対象者を選定しようとされます。
最もユーザーが多い層を選べば、より多くの
ユーザーに刺さる商品につながると考えるわけです。
これは明らかな誤りとは言えません。このプロジェクトの目的が「すでにリリースされているプロダクトを『少しだけ』改善したい」、「既存ユーザーの満足度を上げたい」というものであれば、この対象者選定でも良いでしょう。
イノベーションを目指すにはエクストリームユーザー
しかし、もしプロジェクトの目的が以下のようなものであれば、インタビュー対象者を考え直す必要があります。
社内でDXを起こしたい。
新規プロダクトによってイノベーションを起こしたい。新たな価値を創造したい。
既存プロダクトを大きくバージョンアップして、新規ユーザーを獲得したい。
このような目的におけるインタビュー対象者として選定すべきなのは、標準的とは真逆の「エクストリームユーザー」です。
エクストリームユーザーとは、簡単に言うと対象のプロダクト、サービスに対して極端な関わり方をしている人です。
例えば、標準的なユーザーを比較して極めて頻繁に使う人、特殊な使い方をしている人、またはほとんど使わない人を指します。
エクストリームユーザーの例
前述のスマートフォン開発の例であれば、
スマホを常時5台使っている人
寝食以外はずっとスマホを使っている人
スマホを一切持たない人
電話以外でスマホを使わない人
80才以上の高齢者
などが対象となります。
エクストリームユーザーにも様々な軸(頻度、使い方、環境、属性など)がありますので、プロジェクトに合わせて対象とすべきエクストリームユーザーを定義します。
エクストリームユーザーがイノベーションをもたらす
なぜ多数派である標準的ユーザーよりも、圧倒的少数派のエクストリームユーザーを選ぶべきなのでしょうか。
エクストリームユーザーは、極端な使用体験や非使用体験を日々重ねています。そのため、標準的なユーザーが無意識に我慢していることに対して明確な不満を抱いたり、とても思いつかないような要求を心に秘めていることが多くあります。
彼ら彼女らにインタビューしたり、観察することで、そういった標準的なユーザーや作成側が思いもよらなかった「気づき」を得ることができます。そうやって得られた「気づき」は市場で提供されていない価値の創造につながる可能性が高く、その結果イノベーションをもたらします。
標準的なユーザーでもイノベーションの可能性はゼロではありませんが、「すでに存在しているもの」に順応していることが多く、新たな気づきを我々に与えてくれることは少なくなります。
エクストリームユーザーと向き合おう
残念なことに、私たちは自分の常識とかけ離れた人を「特殊」と扱い、目線をそらす傾向にあります。
ですが、皆さんが社内業務に変革を起こしたいのであれば、もしくは新たな価値を創造したいのであれば、エクストリームユーザーを「特殊」だからと無視せずに、その声に真剣に耳を傾けましょう。
多数派とは異なる(そしてあなたとも異なる)その発言にイノベーションのヒントが隠されているかもしれません。
本記事について詳細を知りたい方は contact@culturelabs.co または ryota.ogawa@culturelabs.coへご連絡ください。
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